遺言を書いておいた方がいい場合(例)
- 夫婦間に子供がいない場合
(特に、主たる相続財産が居住不動産である場合!)
- 再婚をしていて、前妻前夫との間に子がいる場合
- 内縁の妻(夫)がいる場合
- 認知した子がいる場合
- 現在別居中、離婚調停中、離婚訴訟中の配偶者がいる場合
- 法定相続人中に行方不明者がいる場合
- 長男の嫁や孫など、法定相続人以外の人に財産を残したい場合
- 各相続人毎に承継させたい財産を指定したい場合
- 相続人が多数いる人
- 相続財産が居住不動産のみである場合
- 事業(個人事業)をしている人、その事業を家族の中の一人に継がせたい場合
- 法定相続人がいない人、寄付をしたい場合
- 相続手続負担を軽くしておいてあげたいと思う人
1. 夫婦間に子供がない場合
(特に、主たる相続財産が居住不動産である場合!)
夫婦間に子供がない場合の法定相続分は、夫の直系尊属(両親)が存命中の時は、妻が3分の2、夫の尊属(両親)が3分の1という割合になります。夫の生存直系尊属がなく兄弟姉妹がいる場合は、妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1いう割合になります。
しかし、法定相続分にかかわらず、長年連れ添った妻に財産を全部相続させたいと思う方も多いでしょうし、そのためには遺言が絶対必要になります。
特に、主な相続財産が居住不動産である場合には注意が必要です。遺産分割協議の内容によっては、その不動産を処分して他の相続人にその代金を分けたり、他の相続人の持分に応じた家賃相当額を請求されたりする事も考えられます。
直系尊属には遺留分がありますが、兄弟姉妹には、遺留分がありませんから、妻と兄弟姉妹が相続人になる場合は、遺言さえしておけば、財産を全部愛する妻に残すことができます。妻と直系尊属が相続人になる場合であっても、遺言があるのとないのでは天と地の差ほど状況が変わってきます。
2. 再婚をしていて、前妻前夫との間に子がいる場合
この場合の法定相続分は、後妻が2分の1、先妻の子及び後妻の子を全員合わせた「子」が2分の1(この場合、子全員の相続分である2分の1を、子の数で割った額が、子一人当たりの相続分となる。)となります。
会ったこともない先妻の子と後妻・後妻の子との間では、感情的になりやすく、その上「お金」という現実の利害が対立するため、遺産争いが起こる確率も非常に高く、また相続手続に時間も手間もかかってしまうことが多くあります。
争いの発生を未然に防ぎ相続手続を容易にするため、遺言できちんと相続分を定めておく事を強くお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
また、主な相続財産が居住不動産である場合には注意が必要です。
3. 内縁の妻(夫)がいる場合
長年夫婦と同様の関係であったとしても、婚姻届を出していない場合には、いわゆる内縁の夫婦となり、法律上内縁関係にある者(内縁の夫婦)に相続権は一切ありません。その場合、夫(妻)名義の家や預貯金は相続財産として夫(妻)の法定相続人が相続することになり、内縁の妻(夫)は何も貰えないどころか、住んでいる家を追い出されかねない状況になってしまいます。
したがって、自分の死後、内縁の妻(夫)を守ろうとすると、必ず遺言をしておかなければなりません。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
4. 認知した子がいる場合
認知した子も第1順位の相続人(相続分も嫡出子と同様)となります。この場合も、会ったこともない(状況によっては存在すら知らない)子と正妻・その子との間では、感情的になりやすく、その上「お金」という現実の利害が対立するため、遺産争いが起こる確率も非常に高く、また相続手続に時間も手間もかかってしまうことが多くあります。
争いの発生を未然に防ぎ相続手続を容易にするため、遺言できちんと相続分を定めておく事を強くお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
また、主な相続財産が居住不動産である場合には注意が必要です。
5. 現在別居中、離婚調停中、離婚訴訟中の配偶者がいる場合
別居中・離婚調停中・離婚訴訟中であっても、現在の配偶者である事は間違いありませんから、あなたに万が一の事があった際は第1順位の相続人としてあなたの財産を相続する事になります。
縁の薄かった配偶者よりも、自分の両親や兄弟姉妹、あるいは慈善団体等に財産を残したいと思われる方は、遺言を書いておくことをお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
6. 法定相続人中に行方不明者がいる場合
法定相続人中に行方不明者がいる場合であっても、その死亡が確認されるか、または失踪宣告により死亡したものと擬制されるまでは、或いは、排除されていない限りは、相続人たる権利を失うことはなく、遺産分割協議、財産帰属手続が繁雑になってしまいます。
具体的には、行方不明者について、家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立て、不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産を分割することになるのですが、あらかじめ正しく書かれた遺言書があれば、このような手続は不要になり、容易に相続手続をすることが出来るようになりますから、遺言を書いておかれることをお勧めいたします。
この場合であっても、遺留分に注意が必要です。
7. 長男の嫁や孫など、法定相続人以外の人に財産を残したい場合
お世話になった嫁やカワイイ孫、親類縁者等にも財産を残してあげたいと思っても、それらの人が相続人でなければ、その意志をかなえることは困難です。しかし、遺言でそれらの人にも財産を遺贈すると定めておけば、その意志をかなえる事が出来ます。
嫁、孫、その他相続人ではない人に、財産の全部若しくは一部を譲りたいと考えている方は、遺言を書いておくことをお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
8. 各相続人毎に承継させたい財産を指定したい場合
障害を持つ子や特に世話になった子に、他の子よりも財産を多く残したいと思うようなときは、遺言をしておくことをお勧めします。
土地・田畑家屋敷・現金・預金・株式・債権・車・金塊・指輪等、誰にどの財産を残すのかを具体的に指定したいときも、遺言を書いておく事をお勧めします。特に、不動産は現金・預金と違い事実上皆で分けることが困難な場合が多く、また、非常に高価なことから、これを誰に相続させるかを決めておくことは、相続争いの芽を摘んでおくことにもなります。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
9. 相続人が多数いる人
相続人が多数いる場合、多数の人の利害が複雑に絡み合うため、中々遺産分割協議がまとまらない事が考えられます。また、手続についても人数が多い分、非常に繁雑になることが考えられます。
このような場合、遺言があれば、遺産分割協議でもめる可能性は非常に小さくなり、且つ、容易に手続を進めることができますので、遺言を書いておかれることをお勧めいたします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
10. 相続財産が居住不動産のみである場合
相続財産が居住不動産のみである場合、相続人の数が1人であれば、全く問題はないのですが、複数の相続人がいる場合、唯一の財産である不動産をどのように分配するかはとても重要な問題になります。
例えば、一人の相続人がその不動産を単独で相続して、その対価として、他の相続人に対してその相続分に見合った金銭を支払うという事が出来ればまだいいのですが、この場合1人の相続人に相当の金銭上の負担が掛かるため、これは実際には容易ではありません。
また、居住場所や相場、その他の事情によって、不動産は容易に金銭に換えられないという場合もありますし、そもそも、その不動産=唯一の財産をどうやって分割しようかという点で、相続人間の協議が難航する場合もあります。
夫婦に子がない場合においては、被相続人の配偶者と被相続人の直系尊属または兄弟姉妹が相続人になることから、特に注意が必要です。わたしの直接扱った案件ではありませんが、被相続人の配偶者が、他の相続人に相続分を支払うために泣く泣く家を売却してアパートに引っ越したと言う事例も見聞きしております。
このような場合にも、予め遺言を書いておけば、残された相続人が争うことなく、非常にスムーズに相続が為されることになりますので、遺言書を書いておくことを強くお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
11. 事業(個人事業)をしている人、
その事業を家族の中の一人に継がせたい場合
株式・店舗の権利・営業権等、その事業の基盤(財産的基盤)を複数の相続人に分割してしまうと、事業の継続が困難になります。事業に関する権利を巡って相続人が争うというようなことは、どこかの布製のカバン屋さんの例のように、その事業と家族関係に大きなダメージを及ぼすことになってしまいます。このような事態を避け、家業等を特定の者にスムーズに受け継がせたい場合には、遺言をしておくことを強くお勧めします。
また、この場合、事前の準備も必要になりますので、なるべく早くから準備を始めることをお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
12. 法定相続人がいない人、寄付をしたい場合
相続人がいない場合には、特別縁故者がいない限り、相続財産は国庫に帰属します。したがって、特別世話になった人に遺贈したいとか、地方公共団体や慈善団体、宗教団体、社会福祉団体、動物愛護団体、自然保護団体、その他NPO、国連等各種の団体・機関等に寄付したいと思う場合には、その旨の遺言をしておく必要があります。
また、相続人が存在する場合であっても、地方公共団体や慈善団体等に財産を寄付したいと思われる方は、遺言を書いておかなければ、その意志の反映は難しいことから、予め遺言を書いておくことを強くお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
13. 相続手続負担を軽くしておいてあげたいと思う人
遺言を書いておくことで、誰にどのように遺産を相続させるか、又は遺贈するかが明らかになりますので、相続人及び相続財産を調査した上で遺産分割協議を行う必要がほとんどないことから、相続人又は受遺者に対する財産の帰属手続等の相続に関する手続の手間と時間が大幅に軽減することになります。従って、相続手続負担を軽くしておいてあげたいと思う人は、遺言を書いておくことをお勧めします。
尚、遺言をする際は、遺留分に注意が必要です。
遺言を書いておかなくてもいい場合
・ 法定相続人が一人しかおらず、その人に財産をそのまま相続させる場合
・ 不動産・預金・現金・価値ある動産等、処分すべき財産が全く無い場合
・ 認知・後見人の指定をする必要がない場合
・ 死んだ後のことは生きている者に任せ、全く気にしない・・・という場合
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