自筆証書遺言は、遺言者が、紙に遺言の内容の全文・日付・氏名を自書し、これに印を押すことにより作成する遺言です。自筆証書と言うだけあって、すべてを自書しないとだめで、パソコンやタイプライターによるものは無効です。自筆証書遺言は、自分で書けばよいので、費用もかからず、いつでもどこでも書けるというメリットがあります。
一方、デメリットとしては、専門家が関わらないため、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまう場合もあります。
例えば、遺言書の誤りを訂正した場合には、訂正した場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名をし、かつ、その変更の場所に印を押さなければならないなど方式が厳格なので、方式不備で無効になってしまう危険があります。
また、自筆証書遺言は、相続発生(=遺言者の死亡)後にその遺言書を発見した者が、必ず家庭裁判所に遺言書を持参し、相続人全員に呼出状を発送した上で、その遺言書を検認するという手続を経なければならないことから、手続に時間と手間が掛かってしまいます。
更にこの場合、遺言書を発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったら、破り捨てたり、隠したり、改ざんしたりしてしまう危険がないとはいえませんし、一方、簡単に見つからないよう厳重に保管していたら、見つけて貰えない可能性もでてきます。
付け加えて、自筆証書遺言は全文自書しないといけないので、当然のことながら、病気や怪我等で手が不自由になり、字が書けなくなった方は、遺言をすることができません。
公証人という、法律の専門家である公務員が関わるので、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言が作成が出来ます。当然、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。
また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので相続開始後速やかに遺言の内容を実現することができます。
更に、原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配もありません。
また、遺言者が自筆で長い文章を書く必要がないことから、体力的に弱ってきていても、遺言書を作成することが出来ます。
公正証書遺言は、自筆証書遺言と比較するとメリットが多く、安全確実な方法であるといってよいと思いますが、費用がかかることが難点です。
秘密証書遺言は、遺言者が遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり自書である必要はないので、ワープロ等を用いても第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上で封じ、同じ印章を使用して封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自分の遺言書であること及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです。
この手続を経由することにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができますが、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性がないとはいえません。
更に、自筆証書遺言と同様に、簡単に見つからないよう厳重に保管していたら、見つけて貰えない可能性もでてきます。
また、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。